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KakeraBankPress|VOL.9

「野村義男」 ギタリスト

僕達が今、最も興味を持っている方に取材をするこのコーナー。今回のゲストは、ギタリスト「野村義男」さんです。2年連続で野村さんのUSENの番組に出演させて貰った時、音楽や生き方について話が盛り上がりました。その延長戦として今回は「仲間や家族とのコミュニケーション方法」を伺いました。

 

─幹也 : 去年9月に京都で共演したバンドに、先日東京で呼んで貰って再共演を果たしたんですが、 社交辞令で「またやりましょう」とか言いますが、再び共演する事って数%の確率だと思うんです。2回目お会い出来るのってお互いが相手に興味を持っていないと実現しない事だと思うと、野村さんとこうして3回御会い出来てる事を嬉しく思います。

─野村さん : 一つの仕事を貰った時に「やったぁ」って喜ぶんじゃなくて、次の仕事に繋がるように一生懸命やる事を心がけてる。同じ人が2回呼んでくれた時が「成功」だと僕は思ってる。

─弘 : 僕等のラジオの中でも「第二印象」ってフレーズが出た事があるんですが、いかに同じ人と2回目会えるかが重要ですよね。

─野村さん : 僕はよく初めて会う人に「第一印象」を悪くする。そこから2回目会って印象が良くなると倍良く思って貰えるって思う。

─弘 : でも僕等が初めて野村さんに御会いした時、いきなり色んな話しをさせて貰って父親みたいな「包まれてる」感がしてました。

─幹也 : 僕も収録中泣きそうになってました。「家族写真」を初めて聞いて貰った時にイントロ中に「あっこれ夕暮れっぽいね」ってズバリ歌詞の情景描写を当てられて、野村さんには全て見透かされてる気がしました。

─野村さん : そんな凄いもんじゃなくて、きっとそのままの音だったから。

─幹也 : でもそれを見抜いてくれる人って少ないんです。

─弘 : 野村さんって繊細ですよね?一年前の初めての収録の事を結構覚えて下さってたりしてたので。

─野村さん : ビビってるんだって。小さい時なんて学芸会出た事ないから。人前が嫌いだし。

─幹也 : 僕も引っ込み思案でした。そんな自分も嫌いでした。でも目立ちたがり屋でもないのに今目立つ仕事をやってるんですが・・・。

─野村さん : 反動があったのかもね。

─幹也 : ちょっと目立ってれば良かったのに全然目立てなかったからかもしれないですね。音楽は親から反対されてましたか?

─野村さん : 今でも反対されてんじゃないかな。

─幹也・弘 : ええ~(笑)

─野村さん : 未だに正月実家に帰ると「仕事あるのか?」って心配されて「うん何とか」って言ってるよ。

─弘 : 何とかってレベルじゃないじゃないですか(笑)野村さんは人見知りですか?

─野村さん : うん凄い人見知り。

─幹也 : 人見知りは治らないんですか?

─野村さん : うん治らない!

─弘 : 人見知りって人と関係を築いて行くのが苦手なんですか?

─幹也 : いや逆やと思う。特定の人とは絆を深めて行きたいから、この人とは絆を深められるかどうかを判断してるからすぐ行けない。

─野村さん : うん言えてるね。でも僕はもっと壁を作っちゃう。この人苦手って思ったら本当に苦手になる。たまにそれを崩してくれる人はいるんだけど、相手も苦手になった壁が見えるとこっち側も苦手になるから楽になる。

─幹也 : あっお互いが苦手を崩そうとせめぎあいしてる間ってしんどいですもんね。

─野村さん : でもある日その壁がなくなる奴もいて、そうすると毎日のように飲んだりしてる奴がいる。

─幹也 : そんな事あるんですね。

─野村さん : 本当はきっと人見知りだけど「壁を作んのが趣味」なのかもしれないね。

─幹也 : 名言ですね(笑)

─野村さん : 5・6年前にダイエットして、12・3kg落とした時気付いた事がある。「なんだ痩せれるじゃん」じゃなくて「あっ俺は太るのが趣味なんだ」って。

─幹也 : 逆を行くと気付く事があるんですね。

─野村さん : そうすると痩せる楽しみがあるんじゃんって。又リバウンドしなきゃって。太ったら痩せればいいってなると楽になっちゃった。だから人間に対しても「壁」を作ろうよってなった。ある時まで嫌いだった奴を近所に引っ越しさせたり毎日飲みに行ったり出来るのは「壁」の御蔭かも。

─幹也 : 僕は自分を守る為に壁を作りますね。

─野村さん : どんな楽器でも始めれば壁に当たる。ギターなら指が痛くなる。でもその壁がある事によって次に行った時の爽快感の為に壁がある。未だに音楽・ギターには壁がある。毎日何で弾けないんだろうって思うけど、先月弾けなかったものが今月弾けたりする。昔の壁に比べたら低い壁を作ってるんだけど必ず壁に今も当たってる。壁を作るのが好きなんだよ。好きな事に関しては。

─幹也 : 壁を越えるのとスランプは一緒なんですか?

─野村さん : 違う!スランプはね壁じゃない。スランプは精神的なもの。ギターの壁が目の前にあるのに恋愛の壁や貯金通帳が300円とか関係ないものが邪魔するのがスランプ。

─弘 : その時に自分が対応出来る事と出来ない事との区別も出来ない時がありますよね。

─野村さん : その時はまず止まる事。下手にあがいたり動いたりすると余計スランプに陥る。人間は本当に考えてしまうから。何もしない方がいい。


コミュニケーション論の他にも、いろいろなお話を聞かせていただきました。

─幹也 : 今曲が出来ないんです。

─野村さん : 嫌な事心配な事が邪魔してるんだよ。

─幹也 : そうですね(笑)

─野村さん : 壁じゃないそれは。

─幹也 : スランプは分かってる事なんかもしれないです。壁は向こうに行った事がないので、乗り越え方が分からないですからね。

─野村さん : そうスランプに関しては300円の貯金が1000円になれば安心になるという答えが分かってるものだと思う。壁とスランプを一緒と思うと更に大きな壁になっちゃう。

─幹也 : プロって、壁を自分で作る人の事なんですか?

─野村さん : どうだろ。でも僕は、YouTubeとかでギターの上手な人の映像を見て、弾きたいと思った瞬間壁を作る。何十回何百回見て練習してれば、その人と同じものが弾けなくても、やってればその人より早いものが弾けたり次の段階に行ってたりする。その時に壁がとっくに後ろの方にあったりする。

─弘 : ギターを理解するという事ですか?人と人と同じようなものですか?

─野村さん : 僕とギターは違うんだよね。「僕ギター弾くのが好きじゃない。ギターが好きである。」新しく手に入れたギターを見てるだけでいいの。オタクなの。そのギターを買って満足する。でも弾きたくなる。弾いたら良いギターだと更に分かる。って事はもう一本欲しくなる。だからお金を作る為に更に壁を越えて行こうってなる。

─幹也 : 誰かにその一杯持ってるギターを見せたくなるんですか?

─野村さん : ううん。壷と同じ。千年前の壷を手にする事が出来た。ようやく僕の所に来たけど水を入れたりしちゃいけない。千年間前の持ち主が我慢してきたから俺もやっちゃいけない。次の世代の為に保管するだけ。ギターを橋渡ししてるだけなの。「オールドギターは個人レベルで所有が可能な世界遺産である。」オリジナルを次の22世紀まで持っていかなくてはいけない。

─弘 : テレフォンカードと同じですね。

─野村さん : うん。穴開けちゃいけないみたいな。

─幹也 : こういうの男子に多いですよね。

─弘 : でも僕余りコレクター魂ないんですよ。

─野村さん : 絶対無い方がいい!

─弘 : でもギターでシアワセを得れる。シアワセが何か分かってるって良いですよね。

─野村さん : ギターだけだよ。松坂牛より牛丼でいいって思うから。

─弘 : ここに居ていいんだろうかって多くの人が思う中で、何か一個夢中になってシアワセになれるって羨ましいです。

─野村さん : 皆本気じゃないんだよ。本気だと周りが「どうしたの?」って言われる状態になる。今度それが過ぎると認められるから。

─弘 : 写真撮ってる時、花を20分かけて撮るんです。

─野村さん : なってるじゃん!全然気持ち分かる!今週夜中4時間かけてギター一本を磨いてたもん。色んな薬を使って。エレキギターを全部ばらして、磨ききったら写真を撮って仕舞うわけ。それが最高に楽しい。

─弘 : それが幹也君には今ないのかな。

─幹也 : 曲作りは昔そうやったのに、東京に来て一人でやってた事を誰かに評価されるようになったからかな。だって磨き方を言われたら嫌にならないですか?

─野村さん : でも磨いたものを専門家のオタクに見せて、彼に「凄い新品出て来たんだけど」って言って「本当だ」って言われて目を誤魔化す事が出来たら、磨いた甲斐があるって思う。バロメーターになる人を一人決めると4時間磨いても良かったって思う。曲もそうじゃないの。ファンは殆ど喜んでくれるけど、身近で「サビどうかな・・・」って言ってくれる人がいるといいじゃない。

─幹也 : それを苦しいと思わずゲーム性にしたらいいんですね。

─野村さん : え?だってもうゲームな人生を選んだわけでしょ?

─幹也・弘 : (笑)

─野村さん : この職業に入った時点で。

─弘 : 20代の社会人の時は上司からやらなければいけない壁・分かり易い壁を与えて貰ってなぁと思います。今はゴールがないんです。

─野村さん : 今度はゴールは自分で作る側になったんだよ。

─弘 : 自由になった分、色んな道があってゴールを決めれないんです。

─野村さん : もっと現実的にすればいいんだよ。例えばカケラバンクが代々木体育館でワンマンをゴールにしようって決めたら苦しくなるじゃん。そういう考え方は止めたほうがいい。もっと簡単なゴールを作る。僕の場合は2人の娘が20歳になるまでギターで食わそうってロールプレイングゲームをしてる。あと15年弾かないといけない。

─弘 : ゴールの設定の仕方はパッと思いついたんですか?

─野村さん : お父さん何やってんの?って誰かに子どもが聞かれた時に「ギタリスト」って子どもに言わせる為に、子供が産まれ時に思った。

─幹也 : 実現可能なものかどうかって歳を取ると計算してしまいますよね。

─野村さん : 代々木体育館は一個大きな仕事が入ると出来ちゃうかもしれない。一年後か十年後かに。でも20年弾きつづける事はもっと難しい事だと思う。デビューして30年だけど、同期の奴等で故郷に帰った奴一杯いるから。めちゃくちゃギターや歌が上手い奴達が。

─幹也 : 続ける人っていうのは理由があるんでしょうか?

─野村さん : 他にやる事がない。

─幹也 : 続けたいって上手い下手じゃなくて好きかどうかだと思うんです。

─野村さん : 色んな現場行くと、自分より上手い人達がゴロゴロしてるから、辿り着けないって思う。

─幹也 : 上手い人を見て止める人と続ける人がいるのは何でしょうね。

─野村さん : そう言えばそうだね。

─幹也 : 何故僕らは続けてるんでしょうか。Mなんでしょうか?(笑)

─野村さん : きっとね上手い人の隙間は探してるよね。「あっこれ苦手なんだ」「ここ俺の方が得意よ」って安心材料を探してる。

─幹也 : 止める人って多分感覚的に上手いのかもしれないですね。僕は劣等感を感じて圧倒的に負けてると思うからこそ、努力するのかもしれないですね。短所が長所になってるのかもしれないですね。

─野村さん : 真面目なんだろうね。

─幹也 : 僕は音楽始めたのが家族への反骨心からなんですが、続ければ続ける程認められて来たので、今は自分で壁を作らないと止まってしまうんです。

─野村さん : 家族に関してはやっぱり凄く感覚が違う。野村義男がテレビに出ていたのを家族はよく見ていた。スタジオミュージシャンやバックをやってた時家族が「仕事してんのか?」ってテレビの量を仕事量と見てた。だからもっと頑張らなきゃってそれが更にやる気を起こさせてる。

─幹也 : 多くの殺人事件って家族や恋人じゃないんですか。それって分かり合いたいって思うのって身近な人じゃないのかなって思うんです。僕は家族と10代の時全然分かり合えなかったのがコンプレックスだったんですが、多くの人も実は出来てないんじゃないかと思うようになったんです。家族と分かり合いたいと思う事を諦めた人間と続けてる人間がいて、僕は音楽をしながら家族に分かって貰おうという事を未だに続けてる気がするんです。

─野村さん : 僕は諦めた方かな。それよりギターの仕事に日々追われてるから。

─幹也 : 今の家族にも仕事の話はしないですか?

─野村さん : 全くしない。曲を覚えなきゃってなる。

─弘 : 壁が幹也君には今ないのかな?

─野村さん : やりたい事かやりたくない事しか世の中にはなくて、でもやりたくない事をやった時にいつの間にかやりたい事だったって気付く事もある。だから「食わず嫌い」なんだよ。

─幹也 : そうかもしれないです。仕事をされてる時に周りの方とのコミュニケーションでの摩擦があると思うんですが、その時自分のやりたい事をしたい時、自分をなくす方が良いのか突き通す方法を探すのが良いんでしょうか?

─野村さん : 色んなメンバーとの話し合いを沢山するし、アイデアを持ってくる人と自分の持ってる物、どっちも活かそうとする。

─幹也 : それは妥協とは言わないんですか?

─野村さん : ごり押しするんじゃなくて、二つのエッセンスを混ぜる。

─幹也 : 料理みたいにソースと醤油を混ぜたら不味くなりますよね。二つの意見が混ざるかどうかも問題ですよね。

─野村さん : 混ざって形出来たなって思ったら急に違う意見を言う奴が出て来る。その時は、その意見を最優先する。意見を言う人が周りに一杯いるのが良いのかも。

─幹也 : 仕事仲間と仕事じゃない時に飯とか行かれます?

─野村さん : 行く。でも浜崎あゆみのバンドで言うと飯に行く奴と行かない奴はいる。

─幹也 : 一緒に食べに行かない人とコミュニケーションの摩擦は起きないんですか?

─野村さん : 起きない。皆確実に自分の仕事をこなす為に来ているから。「皆仲良し~」じゃないから。

─弘 : 仕事を遂行する為に集まってるんですもんね。

─野村さん : 僕はとても喋ってるの好きだけどリハーサルの7時間一度も喋らない時もある。曲を弾きに来てるから。お堅い企業に入った感じ。

─幹也 : 皆さんそのピリッとした空気を楽しんでるんですか?

─野村さん : 譜面上に書いてあるモノをきちっと出来た喜びがある。ライブもレコーディングみたいなものだから。すごく厳しいからこそ皆がカチッと出来た時「今のCDじゃないの」って喜びが自分のバンド「ライダーチップス」にはない。

─幹也 : 僕等の年頃は我を通す事を必死にやろうとするんです。

─野村さん : 弾けませんって言ってはいけない所だから、言えば「終了、君は要らない」って事になる。リハーサルまでにある程度完璧なものを持って行かないといけない。厳しいよね。でも信頼してるからこそ成り立つ。

─幹也 : そのチームが成り立つまでに時間はかかりましたか?

─野村さん : 10年ぐらいで意識は変わったね。最初の頃はバンドバンドしてたから。

─幹也 : 現場でふざける瞬間、爆笑する瞬間はありますか?

─野村さん : ある。でも音でね。ギャグより音の遊びでやる。

─幹也 : そんな真剣な時間を続けてて、スタミナ性は10年前より劣りましたか?

─野村さん : 今の方がいけてるね。集中力は今の方がある。昔はいっつも楽しい状況、遊ぶ気持ちがあったから。

─幹也 : 家族とのコミュニケーションについて聞きたいんですが、娘が歳を取るごとに変わって行きましたか?

─野村さん : 全く無いね。

─幹也 : それは週一回外で一緒に遊ぶとか、一切育児には関わらないとかされてるんですか?

─野村さん : 決まりごとは無いもないね。会わないときは一週間会わないし。下手すると奥さんとも何日間会わない事もある。

─幹也 : 会わない事で問題は起こらないんですか?

─野村さん : 起こらない。

─幹也 : 反抗期は無かったですか?

─野村さん : なかったね。でも唯一の反抗期は親に隠れてギターを弾いてた事ぐらい。

─幹也 : それ反抗なんですか?親の職業に影響されて従順じゃないですか。

─野村さん : いや弾いてるの聞かせてくれないんだもん。

─弘 : そりゃプロに聞かせられないでしょ。

─幹也 : どっかで親を越えたと思った時に聞いて貰いたいのかもしれないですね。でも自分がやってる職業を真似して貰えて嬉しいですよね。やれって言ってないのに。

─野村さん : うん。就職難でやる事が無いって子達が多い中、夢中になれてるなら良いよね。下手にバイトやるよりバンドやって夢見てる方がクリーンである。バンドマンは皆真面目だったりするから。

─幹也 : 一貫して無言のコミュニケーションですね。東京に来た時自分の意見を通す時に、僕は曲で沢山の言葉を使うと伝わる率が上がるんじゃないかって思ってた時期があったんですが、行動だけで伝わった時、例えばMCで弘が言ってる言葉が僕の今の気持ちも代弁してる時、凄い嬉しかったんです。喧嘩ばっかりしてる時点では余り相手には伝わってないのかなと。喧嘩してなくても相手の気持ちが分かってる時がいい関係かなと。「親の背中を見て子は育つ」って言葉の意味が今日は少し分かった気がします。ありがとうございました。


二人の話を様々な切り口で答えていただきました。

野村義男(ギタリスト)

1975年、姉の影響でフォークギターを手にする。1979年芸能界デビュー。1983年『The Good-Bye』結成、 シングル「気まぐれONE WAY BOY」でデビュー。(1990年The Good-Bye活動休止、2003年再開)

現在は、浜崎あゆみバンド、世良公則GUILD 9、宇都宮隆U_WAVEなどに参加。自身のバンド、RIDER CHIPS、三喜屋・野村モーター's BANDでTOURを行う。ギタリスト、プロデューサーとして幅広いジャンルにて活動中。