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KakeraBankPress|VOL.6

「柚山訓」さん 国際協力NGOジョイセフ プログラムオフィサー

カケラバンク : 僕達が今、最も興味を持っている方に取材をするこのコーナー。5回目のゲストは、震災後の2ヶ月間僕達がライブ会場で沢山の方にご協力頂いて集めた義援金の全額127,171円を受取って下さったNGO「ジョイセフ」さんの「柚山訓」さんです。話は「優しさとは何か」に辿り着きました。

 

─幹也 : 途上国の女性を支援されてるジョイセフさんに柚山さんが入ったきっかけから教えてください。

─柚山さん :  20代後半の頃他のNGOに在籍してましてカンボジアにいました。でも給料がなかなか厳しい面があったので家族を持ったのを機にサラリーマンをしてました。その後、娘を2人授かったのですが、どちらの時も妊娠30週目ぐらいで出産してしまいそうになる「切迫早産」になり、約3ヶ月間妻は入院をしました。そんな苦労の末赤ちゃんが産まれて来るのを目の当たりにして凄く感動しました。もしこれが途上国だったらって考えたら、まずその場で流産していたかもしれないと思いました。そこで8年前ジョイセフに入団したいという手紙を書き送りました。

─幹也 : 僕達は事務所のスタッフにジョイセフさんを紹介して頂いてこうして繋がれたんですが、他の団体さんとは違って、はっきりと義援金の使い道がHPで明確になっていたので、こちらに届けようと決意しました。

─柚山さん : 元々途上国の妊産婦と女性の命と健康を守る活動をしていたので、今回東北の震災で、是非被災地の妊産婦さんや赤ちゃんに支援をしたいと私達は思い支援活動を開始しHPで報告してきました。

─弘 : お金だけ募金すればいいという想いは僕達はなくて、行き先や使われ方をしっかり知りたいと思ってましたし、協力して頂いた方にもやっぱりその後を知りたいと思われてる方が多いと思ったので、HPによる報告は本当に有難いと思いました。

─柚山さん : やはり何事も知って貰う事が大事だと私達は思ってます。例えばザンビアで私たちは活動してますが、余り事実を知られていません。医師や助産師さんは不足していて、プロジェクトを行っている地域の人口は12万人ですが、医師は1人で助産師さんは12人しかいない現状で、小さな施設が20数箇所あっても設備や薬品が十分でない施設もあります。そのような事をまずは沢山の方に知って貰うようにしています。

─幹也 : 途上国の現状の原因はどういった事が挙げられますか?

─柚山さん : 貧困状態の国ではやはり衣食住がまず最初にあって保健や医療は後回しにされてしまうのが原因かと思います。交通機関も発展していないので、医療機関に通えないアクセスの問題もあります。ザンビア等医療費は無料なのに出産時に(助産師が使う)ビニール手袋や消毒液などを自分達で用意しなくちゃならないって事で病院に行かない人が多いんです。例え診療所に行っても助産師がいない地域もあり人材不足も否めないんです。

─弘 : 今回の震災でも沢山の義援金が日本中から集まり、善意は日本の国民一人一人にあると思ったんですが、その善意を何処に使っていいかって戸惑った方が多いと思うんです。

─柚山さん : そうですね。私達はHP等でお知らせしている通り、5月末までの義援金は全て被災地の産婦さん1200人に一人当たり5万円を直接渡そうと思っております。そして今後に関しては緊急的な段階を過ぎたので救援物資よりも、妊産婦さんをケアされる助産師さんの活動のサポートに力を入れていきたい(交通費などの経費を支援)と思ってます。

─弘 : 阪神淡路大震災を僕は経験したんですが、あの時も復興に10年程かかりました。長期的なスパンで東北へもこれから僕等は何が出来るんでしょうか?

─柚山さん : ジョイセフの観点からは、1年ぐらいの支援をイメージしていますが、その後も継続していくかどうかについては、被災地の状況もふまえながら慎重に検討していくつもりです。東北は漁業が盛んなので風土的に女性は男性を支える我慢強い方が多いみたいなので、衣食住の家族のニーズが最優先されて、下着や生理用品に対する希望の声などを中々言い出せないという事もあるようです。だからこそ今年3月から12月末までに出産された女性に罹災証明書を取って頂いて、その方の口座に義援金を直接振り込み、ご本人と家族のために使っていただきたいと考えております。しかしまだ何処にそういった方がいらっしゃるのか等をしっかりと把握出来てない状態です。

─弘 : 震災後日本人が家族に対して意識が変わり「絆婚」という地震がきっかけで結婚された方が急増しているみたいなんですが、これからのコミュニティの理想はどういったモノだと思われますか?

─柚山さん : 1日に1000人の方が途上国を中心に妊娠・出産が原因で亡くなられている背景には家族計画がしっかり出来ていないこともあります。妊娠は女性だけの問題じゃなく男性も関わっている事です。女性の地位が低いと望まない妊娠が増えます。男性の意識を変えたいと思ってます。震災前から僕が関心を持っている事は開発教育なんです。途上国では紙芝居や劇などを通して理想の家族を考えて貰う教育をしています。日本の子供達にはお母さんが亡くなっている途上国の現状を知って貰う事、家族を大事にする価値観を持って貰えるようにして行きたいと思ってます。個人的には、お互いを尊重出来る家族を作り、その輪が周りに広がっていけばいいなと思います。それがひいては色んな場所での男女間の格差が縮まって行くんじゃないかと。

─幹也 : こうしようって事を教えるんじゃなくて、こういう現状があってどうしたらいいかって事を子供の内から知って考えて貰いたいって事なんでしょうか?

─柚山さん : そうですね。押し付けは出来ませんしね。少しでも意識に変化をもたらせたら、いい方向に繋がって行くと思うんです。

─幹也 : 潜在意識って大人になった時出て来るんでしょうね。音楽も問題を解決する「対策」という面より数年後の発症を防ぐ「予防」が出来るモノだと思ってます。


柚山さんとの対談風景

─弘 : 小さい頃「親子劇場」という団体に入ってて演劇をよく見に行ったんですが、その思い出が今でもたまに夢に出てきます。

─幹也 : 「教育」って「塗り薬」じゃなく「キャベツ」なのかもしれないですね。

─弘 : どういう事?

─幹也 : 特効薬じゃなく数年後数10年後に効いて来るものかなぁと。

─弘 : その教育をされてた頃を思い出すと優しくなるのは何やろうな。その時は「優しい時間」って思って過ごしてなかったのに。

─柚山さん : 先生に熱い想いがあって優しかったから、思い出すと「優しく」なれるんじゃないですか。

─弘 : そういった「優しい時間」って減ってるんでしょうか。年間自殺者が3万人いるって事は6万人の親がいるって事で、温かい家族が減ってるんでしょうか?

─柚山さん : 分からないですが、ただ僕はキャベツの千切りや煮物など手間のかかる料理を子供の為に作っている時が大好きなんです。疲れるんですけど、ちゃんと栄養を付けさせようっていう「想い」が子供の体に蓄積されていくと思うと、それがいつかその子が判断に迷った時にエネルギーになると思うんです。

─幹也 : 放射能が内部感染するように「優しさ」も絶対内部感染と言いますか、内から染み込むと僕も思います。

─柚山さん : 心の成長は親で変わって来ると思うんです。教育も同じで時間はかかりますが、それしかないと思います。

─弘 : やってあげてるって思うと人間関係は壊れますよね?焦ってテイクばかりを求めてしまうのは。

─柚山さん:僕もよくテイクを求めてました。子どもが小さい時に夜泣きされるとイライラしてましたし。

─幹也 : 「優しさ」は相手の気持ちをしっかり知ってそれを受け止める力であり、試行錯誤してサポートする方法を考える気持ちなのかもしれないですね。

─弘 : 被災地に行ったあるボランティアの方が「どぶ掃除」しか出来なかった、理想と違ったって落ち込んでました。

─柚山さん : ボランティアってのは想定外の事の方が多いですからね。

─幹也 : 恋愛も教育も全て「こんなもんだ」って捉えないと苛立ちますよね。ライブでもベストは尽くすけど得るものを先に想定してしまうと、それが得られないと不満が残って「失敗」になってしまいます。だから世の中自分の思い通りに殆ど行かないって捉える事が生きる上で大事かもしれないですね。

柚山訓(ゆやまさとる)

1967年生まれ・愛媛県出身。 2児(小3と小1の娘)の父。 国際協力NGOジョイセフ プログラムオフィサー。 途上国の女性たちへの支援の輪を広げていく為に日々奮闘中。

 

ホームページ(国際協力NGO ジョイセフ (財団法人 家族計画国際協力財団))