お問合せなどはメールアイコンから

KakeraBankPress|VOL.5

「須田誠」さん 旅人フォトグラファー

カケラバンク : 僕達が今、最も興味を持っている方に取材をするこのコーナー。4回目のゲストは、2ndミニアルバムと3rdミニアルバムのジャケットでコラボさせて貰った旅人フォトグラファー「須田誠」さんです。話は「敏感なまま生き続ける方法」に辿り着きました。

 

─幹也 : 2年前の9月に新宿の路上ライブで出会った一人の女性が、初対面の僕にプレゼントしてくれた本が誠さんの「NO TRAVEL,NO LIFE」でした。その日の内に僕は読破し、その時立った鳥肌を信じて、初めて読んだ本の著者の方にメールをするという事をし、その翌週路上ライブに見に来てくれたのが誠さんでした。あの不思議な出会いから何度かイベントをさせて貰ったり飯を食いに行ったりして、いつも終電ギリギリまで話が尽きないんですが、今回は震災直後の3月20日に誠さんがブログで、ご自身の過去の写真と共に掲載されてた「今、一番そばにいる人の肩を抱いて。」という詩が僕の中で印象に残ったので、身近な人を大事にする事、自分を大事にする事、その仕方について考えたいと思います。その方法としてカケラバンクは「まずはもっと自分を愛そう」というのが答えの一つなのかなって思ってるんですが誠さんはどうでしょう?

─須田さん :  31カ国を旅していた時、いろんな国で度々乞食や詐欺師や強盗に遭遇し、毎日が自分との対話でした。自分の答えがない状態の人は「個」を大切に出来ないんじゃないかなって思う。写真撮るにしても音楽やるにしても自分の健康状態が崩れたりマネージメント出来ていないと何も出来ないよね。「他人を信じるのが先か。自分を信じるのが先か。」って言葉が俺の詩の中であるんだけど、自分自身を信じてない人が凄く多いなぁって感じてる。震災の時にもデマが流れて他人を信じて生きてた人はパニックになったと思う。

─弘 : 「自分を信じよう」という言葉は良く聞くんですが、その方法が分からないから諦める人が多いと思うんです。僕も社会人してた時は「自分の気持ちを聞く」って事を殆どしてなかったんですが、具体的な方法ってありますか?

─須田さん : やっぱり「旅」ですよ。でも最終的には「自分で気付く」って事が重要になって来る。今まで色んな本や写真やイベントで伝えて来てるんだけど、自分で気付けない人は、旅をしても次の日辞表を出さずに同じように会社に行く事になる。俺が10年間サラリーマンをしてて会社を辞めてアメリカに行った時は、まるで裸で街を歩いてるかのように清々しい感じで、家の中の物を全て窓から捨ててしまったかのごとく身軽になった。それから自分で色んな事を掴み取れるようになったんだよね。

─弘 : 僕等も東京に上京する事を決めた時、迷った末じゃなくて自分の「直感」に従って行動を起こして、気付いたらもう東京にいたって感じだったんです。でもその自分の心の声を聞き逃さないように「敏感」になるって事が大事なんですが、この情報過多の時代でどうしたらいいんでしょう?

─須田さん : 本当に今の時代パソコンや携帯電話で誰かの日記やつぶやき等他人の声を聞く機会は増えて敏感になってるけど、自分の声には鈍感になって来てる気がする。

─幹也 : そうですよね。シンプルなメッセージが世の中には多くて結構売れてる現状もあります。誰かの簡単な答えに飛びつく人が多い気がします。

─須田さん : 俺の本にはダイレクトなメッセージはなくて、読む人がどう感じるかにかかってる。「コーヒーだよ」って言って出すんじゃなくて、ラベルを外して茶色の飲み物を出したい。説明のない「写真」がその典型。それを見て何故この形なのか、その背景にはどんなエピソードがあるのかっていう、言葉じゃない部分を感じ取って自分で掴み取ると深さを得られると思う。そういうのをワークショップで今やってて、良い写真はこうやって撮るんですって教科書的に教えたくない。

─幹也 : リストラ全盛で就職氷河期のこの時代、シンプルなメッセージではもう効かなくなって来てると思うんです。僕等は「教え」ではなく「教育」という「育」を目指して作品を作り続けたいんです。

─須田さん : ちゃんとその2人の想いや人生が歌詞にもコード一つにもライブにも表れて来ると思うよ。想像力が足りない人は、旅に出ても自分で何かを気付けないただの「旅行」で終わるよね。だから想像力を持って常に自分と対話しないと、戦争も無くならないよね。戦争は人の痛みを想像する力がないからだと思う。

─幹也 : だからと言って「敏感になろう」って声をあげた所で誰も敏感にはならないと思うんです。僕等は「敏感なまま生き続け」その姿を見て貰うしかないのかなって思ってます。

─須田さん : 敏感って何?


須田さんとの対談は長時間になりましたが、二人は常に真剣に耳をかたむけていました。

─幹也 : 自分がしたい事や楽しい事をして、毎日1日1回心から「ありがとう」って誰かに言って貰える生活をする事でしょうか。

─弘 : いや僕は「自分が何やってるか分からん瞬間」を一杯作る事やと思う。ライブ中よくあるけど、気付いたら曲終わってるって感じ。

─幹也 : 言葉じゃないって事か。ただ「好き」という一言でしか表現出来ないような瞬間に沢山出会う事かな。

─弘 : そんな事さえ考えない事かもね(笑)。

─須田さん : 常に知的好奇心を持つ事かな。

─幹也 : 僕も最近特に、自分がワクワクする所にだけ行こうって思ってます。

─須田さん : よくファンの人から「どういう写真を撮ったらいいか分からない」って言われる事があるんだけど、心が動いてない証拠だと思う。このペン先一つ見ても色んな好奇心を持って色んな撮り方が見つけられるはず。カメラは「心のバロメーター」だと思う。テンションが左右するしね。

─弘 : そう考えると、上手く行かなかったライブをしてしまう事で悩んでたんですが、敏感に生きてるからこそ下がってる時もあるから、当たり前なのかもしれないですね。

─須田さん : うんそれは全然いいと思う。

─弘 : 人が敏感に生きる為の感受性と、想像力を豊かにするモノは「経験」なんかなって幹也君とよく話してるんですが、僕等が上京して来たように、常に固定概念に囚われず新しい経験を、頭で考えず直感で行動して積んでいけばいいんでしょうね。

─幹也 : 固定概念を外すってどうすればいいんやろ?

─弘 : それも「経験」やと思う。心を動かし続けていく事。感動を繰り返して行く事やと思う。それで固定概念というか無駄なモノが落ちて行くんやと思う。

─須田さん : 今俺すごく力が抜けたスタンスだけど、若い頃ってさ女の子とお金の事しか考えてなかったじゃん?でも歳を経る事で今はすごく色んなモノが「落ちて」シンプルになって来た。本を読んだり美術館に行くようになったのは30過ぎてからなんだよね。モトヤは自分の思想をまだ固めようとしてるけど、もうちょっと色んな経験をしたら、そのうち逆に色んなモノが落ちてくると思うんだよね。それが落ちてきた時に、すごく面白くなって来ると思う。例えばここに36枚撮のフィルムがあるとする。1カット目から時間の流れに沿ってずっと見ていくとその中に名作に値するカットがあったとするでしょ。その名作に辿りつくまでの過去の時間の流れの中でどこが一番重要かというと、どこだと思う?それは名作の前の写真でも、名作を撮る瞬間でもなくて、俺はその1カットと1カットの間の何も写っていない細い黒い部分だと思うんだ。写真を撮って、次のカットを撮るまでの間の時間をどう生きるか?っていう事。美術館に行くのかテレビを見てゴロゴロしてるのか、名作にたどりつくまでの「写真を撮らない時間」が一番重要だよね。

─幹也 : そう言えば誰かが「毎日練習する事は下積みとは言わない」って言ってましたね。

─弘 : ライブでも音と音の無音の間で伝えられるモノがある気がします。日々感動に出会う為の努力が必要なのかもしれないですね。

─幹也 : 経験以外に環境も関係ありますか?自分がやりたいモノを作っても周りから評価されなければ、「俺がやりたい事をCDにした!わぁすごい!」とはならへん気がします。

─弘 : どっちでもいいやん。自分のやりたい事をやったらええやん。

─須田さん : 自分が考えた事を信じるしかないよね。

─幹也 : そう考えると、良い意味でもっとエゴでいいし、もっと一瞬一瞬を大切にしていかないといけないですね。「今を生きる」っていう誠さんの本の中にある言葉が少し分かった気がしました。今日はありがとうございました。

須田誠さん

34歳の時、10年間のサラリーマン生活で築いた地位・安定・守りを全て捨て、呼ばれるように世界放浪の旅に出る。その旅の途中、安く売られていた一眼レフを手に入れ旅人達に使い方を聞きながら独学で写真を撮り始める。

2007年『NO TRAVEL, NO LIFE』にてA-Worksよりデビュー(写真集としては異例の現在第5刷・25,000部を突破)。現在は、雑誌『月刊EXILE』、『DANCE EARTH/EXILE・USA著』アメリカ・アリゾナで撮影、雑誌『旅学』創刊号、第三号の表紙、『カケラバンク』、『FUNKIST』、『rega』らアーティスト写真撮影、NHKBS-1『東京ファッションエクスプレス』他、人物撮影を中心に様々な分野で活躍。

又ファッション専門学校VANTAN、自由大学等で、講義、講演、文筆活動、ワークショップ等も精力的に行う。

『須田誠 旅・写真ワークショップ』は、発表と同時にすぐに定員に達してしまうほどの好評を博す。

2010、2011年は『須田誠 写真展JAPANツアー』を行い全国で写真展を開催。初の海外出展も行い意欲的に発表を続ける。

 

ホームページ