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KakeraBankPress|VOL.13

「安藤哲也」 NPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダ― 理事

カケラバンク:僕達が今、最も興味を持っている方に取材をするこのコーナー。今回のゲストは、NPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダー(初代代表)の安藤哲也さんです。話は「理想の家族像」に辿り着きました。

 

─ 幹也 : 昨年僕が娘を授かった事と写真家の「須田誠」さんとも安藤さんがお友達だと伺い、HPを拝見しました。そして真っ先に目に飛び込んで来た「父親であることを楽しんでますか?」って言葉にビビっと来て、「よい父親ではなく、笑ってる父親を増やしたい」という想いにも興味を持ち、こうして御会い出来て嬉しいです。早速ですが「理想の家族像」はございますか?

─ 安藤さん : 画一化された「理想のお父さん」ってものはなくて、今はもう家庭の形もお父さんの職業もお母さんが働いてるか家にいるか、おじいちゃんおばあちゃんがいるかどうか、兄弟の数も違うし、母子家庭、父子家庭、離婚した者同士の家庭などあらゆる家族のモデルがある訳で、昔で言うパパ・ママ・子ども二人っていう標準家庭ってのは日本全体の15%もないんですよ。

─ 幹也 : ええ~そうなんですね!

─ 安藤さん : 一番多いのがシングルなんです。つまり独身者やお年寄りの一人暮らしの方などです。うちは子どもが3人いますけど、もはや少数派ですよね。

─ 弘 : 僕独身なので多数派ですね。

─ 安藤さん : 昔は就職して次は結婚して、その後自然と出産育児がセットでしたけど、今はもう結婚をしない人が多いし、結婚しても子どもがいない・持たない人もいます。まあそれは個人の自由だから、誰からも強制されることでもないんだけどね。

─ 幹也 : そんな中で「ファザーリング・ジャパン」を設立された理由は?

─ 安藤さん : 僕も15年前に父親になったけど、最初、子育てというものがよく分からなかった。奥さんのマネをして手探りでやってきたけど、娘が可愛くなってのめり込んだ。子育て期って人生の中で面白いステージだなぁと感じるようになって来たんだよね。僕も若い頃からバンドやってたんで、そのステージの上で楽しい演奏をする、ダンスを踊るにはどうすればいいのかって考えた時に、これからの父親は昔のように仕事だけしてるんじゃ難しいだろうと思ったわけです。僕の実家の父親は昭和一ケタ生まれでそういう古いタイプの父親であんまり好きじゃなかった。だから自分が父親になったらジョン・レノンのようにやってみようと思ったんです。でもやりきれない。なかなか楽しめない。やっぱり実家や学校で刷り込まれた男女の役割だったり、男はいつも働いて稼ぐものだっていう価値観に染まってる、捕らわれてるんだなあって事に気付いて愕然とした。でもそれを乗り越えて現代に合った、これからの父親のあり方や役割をNPO作って発信してみたくなったんです。

─ 幹也 : 僕の父も8歳の時亡くなってるのでモデルは無かったです。

─ 安藤さん : そういう人もいるよね。でもこれからはモデルの有無を超えて、自分なりの父親像を追求すべき。そのためには、「父親になったらOSを入れ替えろ!」ってパパたちには言ってるんです。

─ 幹也 : Windows98からXPやvistaに変えるようにって事ですね(笑)。

─ 安藤さん : そう、僕ら40代の男性は昭和の教育を受けてるから、家庭持っても自分の父親や会社の上司と同じような生き方をしてる人が多い。つまりOSが古いんだ。OSの入れ替えはそんなに難しい事ではなくて、育児を面白くするコツとか、夫婦の関係とか、パパ友ネットワークとかを自分なりに考えて作っていけば、自然と育児が楽しくなってOSが変わって、笑顔のパパになれると思うんだよね。

─ 幹也 : 元々出身はどちらなんですか?

─ 安藤さん : 東京の池袋です。

─ 幹也 : 東京って変わりました?

─ 安藤さん : 僕がガキの頃から風景は、車の数が増えたぐらいでそんな変わってないと思いますよ。

─ 幹也 : 四年前に東京に来て人の多さや満員電車にビックリしました。

─ 安藤さん : そう、僕も5年前までサラリーマンだったんだけど、最近満員電車に乗ったら、「うわー、前はこんなのに乗ってたのか!」って思った。もっと人間らしい暮らし方や働き方をしなくちゃなって改めて思うよね。最近働き人の過労死やうつ病も増えてるしね。父親のプレッシャーストレスは昔より格段に増えたよね。逆に子どもは昔から本質的にはそんなに変わってないと思う。大人をちゃんと見てるし。だから子育て期は子どもの為にも、物理的な時間や精神的なゆとりをどう作るかが大事で、それが「笑ってるパパ」への近道だと教えてます。でもOSが古い男性はキャリアや収入や社会的地位に執着して長時間働いちゃう悲しい性があるよね。

─ 弘 : 守る為には稼ぐ・・・。

─ 安藤さん : でも今はそんなに守れないんですよ。労働者の所得は以前よりかなり落ちてるし、一流企業に勤めてる父親の家でも離婚が起きてるし、もはやお金さえ稼いでいれば幸せになれるというものではなくなって来た。かつては働けば働くだけ家計が安定して将来に希望が持てた。だから子どもを3人も4人も作れた。いまそれが難しくなってきてるんだよね。だから女性たちも「男性に幸せにして貰う為に結婚する」って発想はそろそろ止めた方がいいと思うね。

─ 弘 : 確かにそうですね。

─ 安藤さん : 現代では多くの女性が大学も出てるし、働く能力は男性と同じなんですよ。男性だって家庭においては、子ども産む事は出来ないけど育てる事は出来るんだよね。でも平日は仕事が忙しくて土日だけ子どもに関わる父親は依然多い。でもそれだといつまで経っても上手くできないし、子どもとの関係も築きづらいんだ。ほら、勉強だってスポーツだってギターだって毎日やるから上手くなって楽しくなる、でさらに上達するわけじゃない?育児も毎日やるからスムースに出来て、子どもだって笑顔で反応してくれるんだ。そして奥さんからも評価されるし、そうなれば家庭での生活も楽しくなってくる訳です。それは何も特別な能力は要らないよって僕等は言ってるんです。

─ 弘 : OSを入れ替えるってのは「男は働く女は育てる」って所から「男も女も働いて育てる」って意識に変わるって事ですか?

─ 安藤さん : うん、そうだね。時代環境に合ったシステムの方が安心だよね。

─ 弘 : 僕の家はおじいちゃん・おばあちゃん・お父さん・お母さん・弟・妹・いそうろう・おじちゃんだったんですが、おじいちゃんの話やおじちゃんの話が面白かったですね。

─ 安藤さん : 親子の「直列の関係」ではなく、そうした「斜めの関係」が大事。子どもって親だけじゃなく、いろんな人から学べるよね。今ファザーリング・ジャパンでは「イクジイプロジェクト」ってのをやってるんだけど、孫もいない人も含めて中高年の経験豊富な男性が地域で子育てをやってくれてる。お母さん一人じゃなく、パパもおじいちゃんも含め社会みんなで子どもを育てていくという風になっていかないとね。先日も僕らは3人のパパと5人の男の子でキャンプやったけど、自分の子じゃない子を叱ったり、一緒に風呂入ったり一緒に寝たりすると、その子は実のお父さんだけじゃない大人の男性モデルを見るわけで、それが将来の選択肢になったり、多様性への理解に繋がると思う。親と学校の先生しか大人を知らないとキツイと思うんですよ。そういう環境がいま少ないから、自分が大人になって社会に出ても人と関係が築けなかったり、ちょっとした問題にも対応出来ないで心が複雑骨折して、出社拒否とか引きこもりになっていくんだと思うよ。

─ 弘 : 学校と親だけじゃない場所を作るって大事なんですね。僕も「親子劇場」っていう団体に小学生の頃入ってて、演劇見に行ったりキャンプ行ったりしてて、凄い楽になってました。

─ 安藤さん : へー、それはお父さん達もきっと楽しかっただろうね。会社と家の行き帰りだけじゃなく父親にとってもそういう場所、コミュニティが欲しいよね。今の30代のパパは真面目でね。イクメンは結構なんだけど、仕事も育児も一生懸命やり過ぎてパンクしちゃうパパもいる。まるで遊びの無いハンドルみたいだ。もっと肩の力抜いて、楽しんで欲しいよね。実は今度、「不良パパ養成講座」でもやろうかなって思ってるんだ。

─ 弘 : 幹也君も真面目やもんね(笑)。ちゃんと踏み外す事って大事ですよね。

─ 幹也 : カケラバンク2人共が真面目になり過ぎてるかもね。「ちゃんと踏み外す」ねぇ。

─ 安藤さん : 日本人って休むことに罪悪感を感じる国民だから。欧米は人生を楽しむって事が第一義なんだよね。バカンスの為に、休む事を楽しみにしながら仕事してる。でも日本人は逆で週末、翌週の仕事の為に休むだけなんだよね。

─ 弘 : そうですね。

─ 幹也 : では最後に真面目な30代に一言御願いします(笑)。

─ 安藤さん : 結婚も育児もチャンスがあるなら体験1回してみようよ。リスクヘッジばかり考えないで。もし子どもを持てたら特に男性はぜひ子育てにコミットして欲しい。「子どもは未来」だからやりがいあるよ。「未来を育てるステージ」で楽しくロックしようぜって感じかな。

─ 幹也 : 「父親であることを楽しもう」っていう事が無理やりではなく楽に安藤さんの笑顔で伝わって来ました。今日はありがとうございました。

安藤哲也(あんどうてつや)

父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダ―。理事。1962年生まれ。二男一女の父親。出版社、書店、IT企業など9回の転職を経て、2006年に同NPOを設立。「育児も、仕事も、人生も、笑って楽しめる父親を増やしたい」と、企業・一般向けのセミナーや、父親による絵本の読み聞かせ「パパ’s絵本プロジェクト」などで全国を飛び回る。子どもが通う小学校ではPTAや学童クラブの会長も務め、“父親であることを楽しもう”をモットーに地域でも活動中。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」座長、内閣府「男女共同参画推進連携会議」委員、内閣府「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」メンバー、観光庁「休暇改革国民会議」委員、東京都「子育て応援とうきょう会議」実行委員なども務める。著書に『パパの危機管理ハンドブック』(ホーム社)、『パパ1年生~生れてきてくれてありがとう』(かんき出版)、『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『PaPa’s絵本33』(小学館)、共著に『パパルール~あなたの家族を101倍ハッピーにする本』(合同出版)、『絵本であそぼ!』(小学館)、翻訳絵本に『ぼくとおとうさんのテッド』(文渓堂)などがある。NHK第一ラジオ『ラジオビタミン』にもレギュラー出演中。読売新聞でコラム「パパ入門」を連載した。


特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパン

2006年11月に設立。「Fathering=父親であることを楽しもう」という考えを持つ若い世代の父親を支援し、働き方の見直しや企業の意識改革、地域社会の再生、次世代の育成までを目標に、父親の意識改革を促すセミナーやワークショップ、スクール事業、パパ検定事業、旅行事業、父子家庭支援、育休取得推進、産後うつ予防プロジェクトなど、さまざまな父親支援事業を展開している。また2011年3月には児童養護施設を巣立つ子どもの自立支援を目的とした「タイガーマスク基金」、東日本大震災直後にも「パパエイド基金」を立ち上げ、被災地の子育て家庭を応援している。